水雷屯は、上卦が坎(☵、水)で性質は「陥」、下卦が震(☳、雷)で性質は「動」です。朱子は屯を「難」と解き、物が生まれ始めてまだ伸びきらない様子だとしました。屯の字も、草の芽が地を突き破って出たもののまだ伸びていない形だといいます。天地が交わり始めたところで険しさに出会う卦であり、通じる力はあっても、すぐには進まず正しさを守るべき時とされます。
爻辞
一番下の初爻から一番上の上爻まで順に載せました。爻名の九は陽爻、六は陰爻を表します。
初九(しょきゅう)共有された結果で変わった爻
磐桓、利居貞、利建侯。
磐桓(はんかん)す。貞に居るに利ろし。侯を建つるに利ろし。
なかなか進めずに、ためらっている。正しさに身を置いて守るのがよい。侯として立てるのがよい。
磐桓とは進みにくい様子のことです。屯の初めに陽が下にあり、動く震の中にいながら、応じる相手は険しい坎の中の陰柔な爻なので、なかなか前へ出られません。それでも位が正しいため、正しさに身を置くのがよいとされます。さらに卦の主として陽が陰の下にへりくだり、民が慕い寄るので、侯として立つのにふさわしい、と朱子は読みます。
六二(りくじ)共有された結果で変わった爻
屯如邅如、乘馬班如。匪寇婚媾、女子貞不字、十年乃字。
屯如(ちゅんじょ)たり邅如(てんじょ)たり。馬に乗りて班如(はんじょ)たり。寇するに匪ず、婚媾せんとす。女子貞にして字せず、十年にして乃ち字す。
行き悩み、行きつ戻りつして進まない。馬に乗っても、散り散りになって進まない。害をなす者ではなく、縁組を求めているのだ。娘は正しく固く守って嫁ぐ約束をせず、十年たってようやく約束する。
六二(りくじ)は陰柔で中正、上の九五と応じていますが、すぐ下にいる初九の剛の上に乗っているため、その剛に悩まされて進めません。とはいえ初九は害をなす者ではなく、縁組を求めているだけです。六二は正しさを守って承知せず、十年たって数が尽き理が極まれば、筋違いの求めは去り、本来の相手と結ばれる、と朱子は読みます。
六三(りくさん)共有された結果で変わった爻
即鹿无虞、惟入于林中。君子幾、不如舍、往吝。
鹿に即くに虞(ぐ)无し。惟だ林中に入る。君子は幾(き)して舎(す)つるに如かず。往けば吝。
鹿を追うのに山の案内役がいない。ただ林の中へ入り込むばかりだ。君子は兆しを見て取り、やめるに越したことはない。進めば恥じることになる。
陰柔で下卦にあり、中でも正でもなく、上には正しく応じる相手もいません。むやみに動いて自ら行き詰まる、それが案内なしに鹿を追って林の奥へ迷い込む姿です。君子なら兆しを見て手を引くに越したことはなく、追い続ければ恥を招く、と朱子は戒めます。引き返す判断にも見極めの力が要ることを示す一句です。
六四(りくし)共有された結果で変わった爻
乘馬班如、求婚媾、往吉、无不利。
馬に乗りて班如たり。婚媾を求めて往けば、吉にして利ろしからざる无し。
馬に乗っても、散り散りになって進まない。縁組を求めて行けば吉で、利しくないことはない。
陰柔のまま屯の時にいて、自分の力では上へ進めないので、馬に乗っても進まない姿になります。けれども下の初九が正しさを守って低い所にいながら、この爻に応じてくれる。そこで下に向かって縁組を求めれば吉だ、と朱子は読みます。上ばかりを見ず、足もとの確かな相手と結ぶことで道が開ける形です。
九五(きゅうご)共有された結果で変わった爻
屯其膏、小貞吉、大貞凶。
其の膏(こう)を屯(なや)ます。小貞は吉、大貞は凶。
恵みの潤いが滞って行き渡らない。小さな事について正しく固く守れば吉、大きな事について正しく固く守るなら凶。
九五は陽剛中正で尊い位にありますが、屯の時に坎の険の中へ陥っています。応じる六二は陰柔で力が足りず、民はむしろ下の初九のもとに集まる。潤いを持ちながら施せないので、恵みが滞る象になります。朱子は、小事なら正しさを守って吉を得られるが、大事では正しさを守っても凶を免れない、と読みました。
上六(じょうりく)共有された結果で変わった爻
乘馬班如、泣血漣如。
馬に乗りて班如たり。泣血漣如(れんじょ)たり。
馬に乗っても、散り散りになって進まない。血の涙を流し、とめどなく泣く。
陰柔で応じる相手がなく、屯の終わりにいます。進もうにも向かう先がなく、ただ憂え恐れるばかりなので、このような象になる、と朱子は短く注しています。困難の極みで行き場を失った姿が、そのまま描かれた一句です。
原文:『原本周易本義』四庫全書文淵閣本(漢籍リポジトリ KR1a0031 の翻字。校訂・句読:K-magpie)。書き下し文・現代語訳・解説:AI(Claude)が朱子『周易本義』の注をもとに書き、原文・注と照らして直しました。出典と校訂一覧は今日の卦の案内にあります。