遯、亨、小利貞。
遯は亨る。小は貞しきに利し。
遯は通る。小人は正しく固く守るのがよい。
遯は退いて避けることです。下から二つの陰が次第に伸びてきて、陽は退くべき時を迎えています。朱子は、九五が正しい位にあり、下に六二(りくじ)の応もあるので、まだ何かできそうにも見えるが、陰の伸びる勢いを思えば退かざるを得ない、と読みました。君子がうまく退けば、身は退いても道は通じる、というのが「通る」の意味です。「小」は陰柔の小人を指し、勢いに乗じて陽に迫ることなく、正しさを守るよう戒められています。
K-magpie › カササギ診断 › 今日の卦 › 天山遯
下から伸びてくる陰を前に、陽が身を退く時を表す卦です。退いても道は通じ、退き方そのものが問われます。
上は乾(☰、天)、下は艮(☶、山)の卦です。説卦伝は乾の性質を「健」、艮を「止」とします。朱子は、二つの陰が下から次第に伸び、陽が退いて避けるべき時を表すとして、これを六月の卦としました。君子は身を退くことで道を通じさせ、小人には勢いに乗らず正しさを守ることが求められる、というのがこの卦の筋です。
卦全体に掛かる言葉です。変爻がないときに読みます。
遯、亨、小利貞。
遯は亨る。小は貞しきに利し。
遯は通る。小人は正しく固く守るのがよい。
遯は退いて避けることです。下から二つの陰が次第に伸びてきて、陽は退くべき時を迎えています。朱子は、九五が正しい位にあり、下に六二(りくじ)の応もあるので、まだ何かできそうにも見えるが、陰の伸びる勢いを思えば退かざるを得ない、と読みました。君子がうまく退けば、身は退いても道は通じる、というのが「通る」の意味です。「小」は陰柔の小人を指し、勢いに乗じて陽に迫ることなく、正しさを守るよう戒められています。
『象伝』が上下二つの卦の象から卦全体を説いた一文です。
天下有山、遯。君子以遠小人、不惡而嚴。
天の下に山有るは遯なり。君子以て小人を遠ざけ、悪(にく)まずして厳(げん)なり。
天の下に山がある、これが遯である。君子はこれにならい、小人を遠ざける。憎むのではなく、厳しく身を持するのである。
天は果てしなく、山はどれほど高くても限りがあります。朱子はその隔たりに遯の象を見ました。「厳」とは君子がいつも自らを律している姿で、そうしていれば小人は自然と近づけない、と朱子は説きます。相手を憎んで追い払うのではない、という点がこの句の要です。
一番下の初爻から一番上の上爻まで順に載せました。爻名の九は陽爻、六は陰爻を表します。
遯尾、厲、勿用有攸往。
遯尾(とんび)なり。厲(あや)うし。往く攸有るに用うる勿かれ。
退くのに遅れて、最後尾にいる。危うい。どこかへ進み出ようとしてはならない。
初六(しょりく)は、退いていく列の最後尾、つまり尾にあたります。朱子はこれを危うい道と見て、出ていこうとせず、目立たない所で静かに時を待てば災いを免れられる、と注しました。遅れたと気づいた時ほど、慌てて動かないことがこの爻の勧めです。
執之用黃牛之革、莫之勝說。
之を執(とら)うるに黄牛の革を用(もっ)てす。之を説(と)くに勝(た)うる莫し。
黄色い牛の革で固く縛る。誰もそれを解くことはできない。
朱子は黄牛の革の象を、六二が中の位にあって柔順であることに結びつけました。中と順によって自らを固く守り、誰にも解きほどけない、それは退くと決めた志の固さだ、と読むのです。占う者もこのように固く守るべきだ、と朱子は添えています。
係遯、有疾厲、畜臣妾吉。
遯るるに係る。疾(やまい)有りて厲うし。臣妾(しんしょう)を畜(やしな)うには吉。
退くべき時に、つながりに引き留められている。病があって危うい。臣や妾を養うのであれば吉。
九三は下の二つの陰と隣り合い、退くべきなのに心がそちらに引かれています。朱子はそれを、病を抱えたような危うい道と見ました。ただし臣や妾を養うことについては吉とされます。君子が小人と関わるなかでも、臣妾ならば賢さを求めなくても養えるからだ、と朱子は説明しています。
好遯、君子吉、小人否。
好(よしみ)あれども遯る。君子は吉、小人は否(しか)らず。
情を寄せる相手があっても、それを断って退く。君子なら吉。小人はそうはいかない。
下の初六と応じ合う九四には、心を通わせる相手がいます。それでも乾の剛健さを備えているので、その情を断ち切って退くことができる、と朱子は読みました。これは自分に克つことのできる君子にしかできず、小人にはできません。吉が君子の側にだけ言われているのはそのためです。
嘉遯、貞吉。
嘉(よ)き遯なり。貞なれば吉。
見事な退き方である。正しく固く守れば吉。
陽で中正の位にある九五は、柔順で中正な六二と応じ合っています。互いに正しい形のまま退いていく姿を、朱子は見事で美しい遯としました。それでも吉は、このように正しくあれば、という条件つきで語られています。
肥遯、无不利。
肥(ゆた)かに遯る。利しからざる无し。
ゆったりと退いている。利しくないことはない。
上九(じょうきゅう)は卦の外にあり、下に縛られる関わりも応じる相手もいません。朱子はこれを、遠く退いて悠々と身を処する姿と見て、「肥」をゆとりがあって満ち足りている意味と注しました。どこにも引っかかりを残さない引き際とはどんなものか、考える手がかりになる爻です。
今日の卦でこの卦が出たとき、何を読むかは変爻の数で変わります。変爻がなければ卦辞を、一本ならその爻の爻辞を読み、複数なら朱子『易学啓蒙』の規則に従います。
原文:『原本周易本義』四庫全書文淵閣本(漢籍リポジトリ KR1a0031 の翻字。校訂・句読:K-magpie)。書き下し文・現代語訳・解説:AI(Claude)が朱子『周易本義』の注をもとに書き、原文・注と照らして直しました。出典と校訂一覧は今日の卦の案内にあります。